出版社立ち上げ(た)日記

ひとり出版社・人々舎の日記です。

人々舎のはじまり

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はじめまして。ひとり出版社・人々舎の樋口聡と申します。

簡単に自己紹介をします。1976年5月26日生まれ。私は元々音楽の道を志し茨城県水戸市から上京し 、その後に出版の道へと入りました。ロスジェネ世代ど真ん中ですので、まあ、うまくいかないことばかりでした。今回の立ち上げは、おそらく、最後の挑戦になるかと思います。

面白いかどうかは別として、出版社立ち上げ(た)日記を書いていきます。(た)が入っているのは、本当は、もっともっとずっと前に、立ち上げ最中の時期があったのに、ズルズルと伸びてしまったからです。とにかく、考えること、やることが、たくさんありすぎました。でも、知らなかったので仕様がないのですが(仕様がなくない)。

まずは、なぜ出版社を立ち上げることにしたのかを、書いていきたいと思います。

結論から書きますと、理由はありません。

理由はない、というか、こうなってしまった、という方が正しい表現な気がします。おそらく、ほとんどの、ひとり出版社及び、小規模出版社の先輩たちの「はじまり」は、そうなのではないでしょうか。「こうなってしまった」。

これは、1冊目の刊行が近づいているのに、まだ、(おわりのない)出版社の準備をしている今も、強く思うことです(ホームページさえできていない)。なんて言いますか、出版社を立ち上げることの(あえて使いますが)メリットを、言葉にして伝えることができません(もしいらしたら、教えてほしい)。

具体的には、メリットの代名詞「お金」になんかなりません。他の業界からすると、とんでもないシステムだと思います。負け戦です。

ちょっと脱線しますと、「ひとり出版社」なんて名前がひとり歩きして、ちょっとしたブームなところはないでしょうか(ないか)。でも、外側から見えているのは光が当たる部分で、影の部分だってあるわけです。負け戦に挑み、負けていった人たちだっているはずです。見えている光の部分でさえ、血の滲む、泥を吸うような地道な努力を続けることで、なんとか立っている(はず)。ひとり出版社なんて、組織に属さず、自由でいいな、なんて思っていた自分を(本当に失礼極まりない)、恥じ入ります。

お金の話を続けると、出版業界のシステムに参加するならば、新規参入者は、本を出すのに結構なお金がかかり(結構なお金です)、売れた分だけのお金が、その半年後に入金される。その半年間、何をしていろと??(やることはあります)

では、なんで出版社を立ち上げるのか。

大袈裟ですが、生きた心地がするからです。本を作っていると、身体と心が繋がっている実感があるのです(少なくとも自分には)。

デスクを前に、「あの著者さんとこんな本を作りたい。その本はこんな本になるはずだ。そしてこんな書店さんに並んで、あんな読者に恵まれるだろう」

原稿を読みながら、「この箇所には、こんな内容があったら、全体としてどうなるだろう」「この箇所で、この著者さんは、どのような気持ちになったのだろう、それを是非とも読んでみたい」

デザイナーさんと、「この本は、こういう著者さんで、こういう内容で、こういう読者に読んでもらいたい、ずっと手元に置いておきたくなる、そんな本にしたいんです」

DTPさんと、「この本の著者さんはこのような人です。このような読者に読んでもらい、このくらいの時期に本屋さんで売りたい。だからこのスケジュールで頑張りたいのです」

校正さんと、「この本は、長く読み継がれて欲しいので、表記や事実関係はもちろん、文脈についても指摘してください」

印刷所さんと、「この本は、こういうコンセプトなので、このような造本にしたい。インキはこれにしたいが、この紙への色のノリはどうですか??」「このページから紙を変えて、このような表現にしたい。製本の制約はありますか??」

そして、こんな本の作り方は、組織には向かないのです。こんなやり方をしていたら、いつ本ができるのかわからない。それでは、計画が立てられない。当たり前なのです。だから、ひとりで立ち上げることにしました。

当然、数々のハードルがあります。誰のどんな本を出すのか、費用はどうするのか、流通はどうするのか、そもそも、どこでやるのか。

先行する、ひとり出版社の先輩方の背中には、本当に励まされました。だからといって、自分ができるわけではありません。でも決めたのです。

本当に青臭いと思いますが、自意識からくる恥ずかしさに、いつまでも絡め取られているわけにはいかない。

そんなわけで、人々舎をはじめます。どうぞよろしくお願いいたします。